パラミクソウイルスに対するワクチンの種類

パラミクソウイルス感染は鶏の法定伝染病であるニューカッスルウイルスにより起こります。一般にワクチンにはウイルスや細菌など、病原体に対して特異的な抵抗力を与えるもので、病原性を弱めた病原体自身(弱毒生ワクチン)やホルマリンなどを加えて病原体を殺してその死んだものを用いる不活化ワクチンがあります。

死んだ病原体だけでは免疫力が十分付かないものが多く、オイルやアルミニウムゲルなどのアジュバント物質と混ぜて、吸収が一気に進まないようにして、じわじわと免疫を刺激する効果が持続するように作られています。そのため、オイルワクチンでは接種部位が腫れるのです。それでは具体的な話に移りましょう。

5種ワクチンって効くの?

5種などというものがありますが、これは5種類の病原体の抗原(死骸)が含まれたワクチンということで、鳩の予防に使う鶏用のNDワクチンもたいてい、3種類ほどの病原ウイルスに対して組み合わさっています。

しかし、本当は鳩にNDの予防をしたい場合には他の病原体の抗原(死骸)の入っていないワクチンの方が免疫効率は高いのですが、現在複数の入ったものしか入手できないのでこれを用いています。ですから、5種が3種よりも効くというのは間違いです。いくらたくさんの病原体に効くといっても、鶏にあって、鳩には問題とならない病気の抗原が入っていても意味がないのです。むしろ、無駄な病原体に対する免疫を起こすことで鳩にとっては無意味なエネルギーロスとなるのです

○種の数字が多いい方が有り難みがあるように思う方もいますが、全く無駄な成分が入っているということをご理解ください。

オイルワクチンと生ワクチンの違いはあるの?

パラミクソウイルスのワクチンを例に取るとオイルワクチン(オイルアジュバントワクチン)生ワクチンというのがありますね。どちらもニューカッスル病に対するワクチンですが、目的が期待する作用が全く違います。

生ワクチンはウイルスが感染する入り口を防御します。ウイルスは目、鼻、喉などから感染しますがこれらの入り口は粘膜に覆われた上皮組織と言われるものです。まずウイルスが粘膜の細胞に接着して入り込み増えていきますが、この段階でウイルスすを撃退する免疫が粘膜免疫というものです。免疫には交代による免疫と細胞による免疫がありますが、粘膜免疫ではIgAという免疫抗体と細胞性免疫の細胞障害性T細胞(CTL)が作動します。この免疫を生み出させるのが生ワクチンです。このワクチンは入り口の防御とい

製造方法・生ワクチン

う面では良いのですが、一旦このバリヤを突破して体内に侵入してしまったウイルスに対しては効果が殆どありません。生ワクチンでは血液中の防御抗体を生み出す力がとても弱いのです。そして免疫の持続期間が2~3ヶ月と短いのです。利点は正しく生理的食塩水で溶いて目に垂らすだけという簡便さです。弱いけれど病気を起こすことができない生きたウイルスが入っています。

オイルアジュバントワクチンは皮下や筋肉内に注射しなければなりませんが、血液中に感染防御抗体を作ることができます

製造方法・不活化ワクチン

そして、この免疫の効果が1年間は持続します。弱点は生ワクチンと違って、目、口、喉などの粘膜免疫作用が無いことです。死んだウイルスが入っていますが免疫力を高めるアジュバントという成分が添加されています。

 

どっちのワクチンを使えばよいの?

TCLでは雛鳩が生まれて脚管を選手鳩鳩舎に移すまでに生ワクチンの点眼接種をしてその生ワクチンが効いている2~3ヶ月の間にNDのオイルワクチンを首の後の皮下に接種するように指導しております。これにより、最小の手間で、効果的な免疫を与えることができます。

TCLの鳩舎ではこの標準法に更に加えて、オイルワクチンを摂取するときに更に同時に二度目の生ワクチンの点眼接種をしています。これにより粘膜免疫も抗体免疫も最大限に強化されます。万が一、コンテナ内部で感染した鳩に遭遇したり、選手鳩鳩舎に、パラミ糞の感染鳩が飛び込んできても、かかることがないのです。万全なワクチン接種法です。

水溶性のワクチンはどうなの?

水溶性のアジュバントワクチンというのはサラサラして打ちやすいメリットはありますが、オイルアジュバントワクチンに比べて持続効果が短くなります。油の代わりに吸収されにくいアルミニウムが使われています。TCLではあまりお勧めしません。